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ソバーキュリアス、そしてペスカタリアン——"選ばない自由"に応える、これからの料飲の考え方

連載|テーブルの仲人の考えごと 第6回


横浜のホテルバーからキャリアを始め、インポーター営業、総合食品酒類卸売、量販店の現場管理、ラグジュアリーホテルのソムリエからビバレッジマネージャーまで、料飲の現場を多角的に歩んできた本郷孝人が、テーブルを囲むゲストとお料理、そしてドリンクの"あいだ"に立つ仲人の視点から、日々のサービスで考えていることを綴る連載。第6回のテーマは「ソバーキュリアス」。世界的に広がるこの飲酒観の変化に、レストランの現場はどう応えていくのか。本郷さんが現場で無意識のうちに実践していたアプローチと、その先にあるペスカタリアンという次のステージを読み解きます。


文|シェ・フルール横濱 本郷 孝人 記事構成|Apoptosis 尾崎 眞子


目次

  • 無意識のうちに、ソバーキュリアスに応えていた──現場で気づいたテーブルマリアージュの原点

  • ソバーキュリアスへのアプローチ──コンセプトマッチングとプライシングの設計

  • さらなるステージへ──ペスカタリアン × ソバーキュリアスという可能性

  • 総括──気づけば、すでに取り組んでいたこと


無意識のうちに、ソバーキュリアスに応えていた──現場で気づいたテーブルマリアージュの原点



ソバーキュリアスについてWikipediaで調べると、以下のように記されています。


ソバーキュリアス(sober curious)は、支配的な飲酒文化にただ従うのではなく、飲酒へのあらゆる衝動、誘い、期待に対して疑問を持ったり、アルコールとの関係を問い直したりすることを指す。飲酒量を減らす、またはまったく飲酒しないことを、個人のライフスタイルとして選択することを含む。イギリスのジャーナリストであるルビー・ウォリントン(Ruby Warrington)が出版した本のタイトルに由来し、「sober(しらふ)」と「curious(好奇心旺盛な)」の2語を組み合わせた造語である。

また、この言葉が日本で認識されるようになって10年あまり、「飲んでもいいし、飲まなくてもいい」という柔らかいニュアンスで理解されることが多い、ともされています。


<補足:ソバーキュリアスについてもう少し詳しく>

英語の「sober(しらふの)」と「curious(好奇心旺盛な)」を組み合わせた造語です。イギリスのジャーナリスト、ルビー・ウォリントンが2018年に出版した著書『Sober Curious』(日本語訳『飲まない生き方 ソバーキュリアス』は2021年・方丈社刊)をきっかけに、欧米から世界へと広がりました。健康や宗教上の理由でお酒を「断つ」のではなく、「飲まないことで自分の生活にどんな良い変化があるか」という好奇心に基づくのが特徴で、ミレニアル世代やZ世代の健康志向、多様性を尊重する時代の空気とも響き合っています。


私がソバーキュリアスという言葉を知ったのは、数年前にとあるネットの記事であったと記憶しています。その記事を読み進めて感じたことは、全て既にレストランサービスの現場で、実際に行われていることであると気づいたことでした。


飲みたいけど飲めない、飲んでみたいけど飲めないなど、アルコールに対しての受け止め方も様々です。そこから導かれるように考えるに至ったのが、ワイングラスで美味しいワインを楽しむように、ワイングラスで美味しいノンアルコールやローアルコールを飲み、お食事の時間を楽しんでいただくということでした。


まさに、明確にテーブルマリアージュの原点、ベースとなる考え方が見えた瞬間でもありました。


ソバーキュリアスには様々な理由があると思いますが、これに対応していくには、お料理と飲み物を合わせるという「ペアリング」という二次元の概念を基本としたメニューやビバレッジの用意では、対応できないことだと思います。


ソバーキュリアスに対応するには、ペアリングという二次元の概念ではなく、テーブルマリアージュという四次元、五次元のメニューやビバレッジの用意が必要なのかなと思います。


※参考記事





ソバーキュリアスへのアプローチ──コンセプトマッチングとプライシングの設計


では、どのようにアプローチしていくのか。まずは、お店のコンセプトにマッチングさせた、アルコール・ノンアルコール・ローアルコールの、アルコール度数20%未満のドリンク(ビバレッジ)メニューを用意していくことだと思います。



シェ・フルール横濱では、既にその用意がされていて、日々ソバーキュリアスな環境を思い思いに楽しんでいただけているように実感しています。


そして、ここでプライシングです。これまでの基本概念として、アルコールは高くて種類が多い、ノンアルコールは安くて種類が少ない、ということがあったように思います。ですが、シェ・フルール横濱のドリンクメニュー構成は、アルコールとノンアルコールが、プライシングも種類もほぼ同等のバランスとなっています。


そしてこのことこそが、美味しいのは当たり前、「美味しかったから楽しかった」へ、そして「ワンモアバイ」を生む、テーブルマリアージュの基本になっていると感じています。


ここで大前提として必要なことは、誰が飲んでも「美味しい!!」と笑みが溢れてしまうアイテムであること。特にノンアルコールでは最も重要なことであり、この選定に際しては、日々の情報収集とアップデートを怠ってはいけないと考えています。



さらなるステージへ──ペスカタリアン × ソバーキュリアスという可能性


ソバーキュリアスの嗜好傾向を深掘りしていくと、ペスカタリアンの嗜好傾向にも類似しているようにも感じています。



<ペスカタリアンとは>

魚介類は食べるけれど、肉類は食べない食事スタイルのことです。語源はイタリア語で魚を意味する「Pesce(ペシェ)」に由来し、正式にはペスコ・ベジタリアンとも呼ばれます。肉も魚も一切口にしないベジタリアンやヴィーガンに比べ、食べられる食材が多く、実践のハードルが比較的低いのが特徴です。魚を中心とした和食との相性もよく、健康志向や環境への配慮から、近年選択する人が増えています。


まだまだ明確なエビデンスはないのですが、ペスカタリアン × ソバーキュリアスをテーマにしたコースやプラン、イベントなどが、Apoptosisさんと取り組めたら楽しいかなと思っています。



総括──気づけば、すでに取り組んでいたこと


気づけば無意識のうちに取り組んでいたソバーキュリアスへの対応でしたが、この機会にテーマをいただき、記事にできたことで、現在の立ち位置や方向性、さらなるステージへのイメージを考えられるようにもなりました。


今後も、日々の情報収集とアップデートを怠らずに、お客様にさらに楽しい時間を提供できるように取り組んでいこうと考えています。



執筆者プロフィール

本郷 孝人(ほんごう たかひと) シェ・フルール横濱

ビバレッジコーディネーター


1971年、神奈川県横浜市生まれ。高校卒業後、大学在学中より横浜のホテルのバーからバーテンダーとして料飲サービス業のキャリアをスタート。都内のホテルに勤務したのち、総合酒類小売業、輸入ワインおよび洋酒業、総合食品酒類卸業で、ヴーヴ・クリコ・ジャパン、MHD(モエ・ヘネシー・ディアジオ)などを経て、約25年間にわたり営業職として従事。2019年より飲食店サポート業務を手がけつつ、再びサービス業界へ。福岡のフレンチ「アニオン」、箱根リトリートホテル&ヴィラ by 温故知新、ウエスティンホテル横浜のメインダイニング「アイアンベイ」での勤務を経て、2025年8月よりシェ・フルール横濱の現職。バー、ホテル、インポーター、ディストリビューター、量販店、そしてサービスの現場―飲料をめぐるあらゆる立場を経験してきた視点から、「テーブルマリアージュ」というキーワードを軸に、料飲のあり方を探求し続けている。


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