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お茶のテロワールはなぜ見えづらいのか——構造として捉える

  • 執筆者の写真: Nakamura Lawrence Yoshihito
    Nakamura Lawrence Yoshihito
  • 9 時間前
  • 読了時間: 4分

連載|ソムリエの論あるノンアル 第03回

「Best Sake List in Japan」「Most Original Wine List in Asia」など国際的な受賞歴を持つソムリエ・中村ローレンス義仁が、ノンアルコール飲料をプロの論理で読み解く連載。第3回のテーマは「お茶のテロワールはなぜ見えづらいのか」。

ワインと違い、製法や抽出方法によって大きく変容するお茶のテロワールは、なぜ見えづらいのか。その理由を三つに整理した上で、自然条件・人・製造工程・文化・体験という五つの要素として構造的に分解します。現場で語れる言葉に変換するための考え方を解説します。


文|ソムリエ 中村 ローレンス 義仁


目次

  1. 「お茶にもテロワールあるの?」——問いを立てる

  2. お茶のテロワールが見えづらい三つの理由

  3. 構造として分解する——五つの要素

  4. 要素の組み立て方——説明の実践

  5. お茶のテロワールを語るということ


1. 「お茶にもテロワールあるの?」——問いを立てる

「お茶にもテロワールあるの?」——割とテロワールという言葉が幅広く使われる一方で、こんなことをよく聞かれる。今回はこれを考えてみたい。



ワインのように語られることが多いテロワールだが、お茶においても同様に、その土地の条件と人の関わりによって味は大きく変わる。ただし、その違いはワイン以上に見えづらく、言語化が難しい領域でもある。


2. お茶のテロワールが見えづらい三つの理由

お茶のテロワールが見えづらい理由は大きく三つある。


① 品種の違いが製法に均されやすい

品種の違いが製法によって均されやすく、味として現れにくい。ワインであれば品種の個性がそのまま香りや風味に直結しやすいが、お茶は蒸しや火入れなどの工程によって大きく変容する。



② 製造工程の影響が大きく、知られていない

蒸しや火入れなど製造工程の影響が大きく、その意味も一般的にはあまり知られていない。同じ産地の葉でも、工程次第で全く異なる味わいになる。



③ カテゴリーと抽出方法で最終的な体験が変わる

お茶のカテゴリーとその抽出方法によって味が大きく変わるため、最終的な体験に際して「葡萄品種+生産地の特徴+その他=テロワール」のように単純に捉えづらい。この構造によって、お茶のテロワールを把握することは難しく感じさせる。



3. 構造として分解する——五つの要素

そこで重要になるのが、構造として捉えることだ。何がその味をつくっているのかを分解していくことで、はじめて説明が可能になる。


自然条件

土壌、標高、気温、降水量、霧の有無、水質など。例えば山間部の茶は寒暖差や霧の影響を受けやすく、香りが立ちやすい傾向がある。


農家の栽培方針や収穫タイミング、品種選択によって味は大きく変わる。同じ土地でも誰がどう関わるかで全く別の表現になる。


製造工程

蒸し時間、揉みの強さ、乾燥方法などによって、同じ葉でも仕上がりは大きく変わる。ここで味の輪郭が決まる。


文化的背景

地域ごとの飲み方や評価基準、シチュエーションなども味の方向性に影響する。どのような味が「良い」とされるかは文化によって異なる。


体験

器、温度、抽出方法、提供環境によって感じ方は変わる。同じ茶でも、どこで誰とどう飲むかで印象は大きく異なる。


4. 要素の組み立て方——説明の実践

これらの要素を一つずつ切り分けた上で、「このお茶はどの要素がどう作用しているのか」を組み立てていく。例えば、「標高の高さによる香りの出方」と「浅蒸しによる軽やかさ」が重なっている、といったように説明できる。


重要なのは、この分解をそのまま説明することではない。顧客の理解度や興味に応じて、どの要素を切り取るかを選ぶことだ。構造を理解しているからこそ、シンプルにも、深くも語れる。


5. お茶のテロワールを語るということ

お茶のテロワールを語るとは、産地を語ることではなく、「何がその味をつくっているのか」を構造として捉え、それを適切な言葉に変換することだ。

ではその構造を、どのように味覚として整理し、誰でも使える形に落とし込むのか、言語化するのか。次回以降で考えを深められたらと思う。


著者プロフィール

中村 ローレンス 義仁

Sommelier

シドニーで修業後、蕎麦懐石の支配人として店舗立ち上げから運営を牽引。「The Best Sake List in Japan 2020」「Most Original Wine List in Asia 2020」「Asia Star Award 2021」など国際的な受賞歴を持つ。現在は都内飲食企業のサービス・ビバレッジ責任者を務める傍ら、Apoptosisで日本茶飲料をはじめとするノンアルコール飲料の開発に取り組む。真空管アンプの温かみのある音が好き。


FOR FOOD & BEVERAGE PROFESSIONALS

料飲の体験を、ノンアルコールで拡げていく。

産地、製法、ペアリングなど、Apoptosisがキュレーションした情報を随時お届けしています。

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