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「テロワール」という言葉から紐解くサービスのアプローチ

  • 執筆者の写真: Nakamura Lawrence Yoshihito
    Nakamura Lawrence Yoshihito
  • 3 日前
  • 読了時間: 4分

連載|ソムリエの論あるノンアル 第02回

「Best Sake List in Japan」「Most Original Wine List in Asia」など国際的な受賞歴を持つソムリエ・中村ローレンス義仁が、ノンアルコール飲料をプロの論理で読み解く連載。第2回のテーマは「テロワールを、現場のサービスに使う」。

テロワールとは、土地・気候・人の技術・文化・体験が重なり合って生まれる産地の個性です。飲食の現場では、この概念を「お客様への伝え方を選ぶためのツール」として活用できます。本稿では、ワインを例にしながら、現場で使えるサービスの型を具体的に解説します。


文|ソムリエ 中村 ローレンス 義仁


目次

  1. テロワールを、現場のサービスに使う

  2. 伝え方の型:4ステップ

  3. 実践例:白ワインの場合

  4. NGパターンとその理由

  5. テロワールは「話し方の地図」である


1. テロワールを、現場のサービスに使う

飲食店のサービスにおいて、価値をどう伝えるかは、非常に楽しく悩ましいテーマです。

「いいワインですね」と言われたあと、「ありがとうございます」で終わってしまうこと、ありませんか。


本当はもう一歩踏み込めるはずなのに、何をどう言えばいいか分からず、そのまま会話が終わる。

あるいは説明しようとして詳しく話してみたものの、いまいち反応が薄い。

いいものは出している。知識もある。

それでも伝わらない。


このズレは、知識の問題ではなく、「何を、どこから、どう話すか」が決まっていないことから起きています。

そんなシチュエーションの代名詞のような言葉が「テロワール」です。

分かるようで分からない、便利だけど曖昧になりやすい言葉でもあります。


今回は、「テロワール」を題材にしながら、知識として覚えるためではなく、現場で使う“話し方の型”として整理したものです。

すべてを話そうとせず、「このテーブルに合わせてどう話すか」だけ意識してください。



ここでいうテロワールとは、土地の説明ではなく、「価値の伝え方を選ぶための考え方」です。

テロワールは、複数の要素が重なってできています。自然、作り手、技術、文化、そして体験。これらをどう切り取るかで、伝え方は変わります。

(テロワールという概念について、私の考え方を記した記事はこちら


2. 伝え方の型:4ステップ

サービスにおいてテロワールは、それ自体を説明するものではなく、「どう話すか」「サービスの道筋」を決めるために使います。


  • 一言で印象を簡単に伝える(この商品でどういう体験が獲得できるかイメージしていただく)

  • 具体的な表現で説明する

  • 必要なら軽く理由を添える

  • 顧客に提供したい体験に話題を戻す


これだけで、誰にでも通じる形になります。


3. 実践例:白ワインの場合

同じワインでも、入口と展開を変えるだけで伝わり方は大きく変わります。


入口:感覚から入る

「すっきりしてて、レモンみたいなキリッとした酸があります」

「後味が軽くて、食事と合わせやすいタイプです」


展開:ストーリーを軽く添える

「海に近い畑で、風が通るような場所で育ってるので、この軽やかさが出るんですよ」

「この生産者、ブドウのピュアな味わいを表現するために、収穫のタイミングをすごく大事にしてるんです」


補足:必要なら少しだけ理由を足す

「手作業でブドウを摘んで、丁寧に選別することで、こんなクリアな味わいになるんです。」


仕上げ:体験に戻す

「なので、今日のお料理とすごく合わせやすいと思います」

「このくらい冷やして飲むと、こういう暑い日には、さっぱりして気持ちいいですよ」


4ステップをつなげると、こうなります:

「こんな日にぴったりのすっきりした白で、レモンような酸の爽やかさが特徴です。手作業で丁寧にブドウを扱うからこんなにピュアな味わいなんです。今日のお料理にもすごく合いますよ」


4. NGパターンとその理由

逆にNGはシンプルです。これはすべて、伝え方の優先順位のミスです。


  • いきなり専門用語から入る

  • 「ミネラル」などの抽象ワードで止まる

  • 背景から長く話し始める


5. テロワールは「話し方の地図」である

飲食の現場で考えるテロワールは、土地の説明ではありません。「このお客様に対して、どう伝えるか」を選ぶためのツールです。

難しく語る必要はなくて、同じ温度感で、少しだけ奥行きを足すこと。

それができると、説明が提案に変わり、価値が自然に伝わるようになります。




著者プロフィール

中村 ローレンス 義仁

Sommelier

シドニーで修業後、蕎麦懐石の支配人として店舗立ち上げから運営を牽引。「The Best Sake List in Japan 2020」「Most Original Wine List in Asia 2020」「Asia Star Award 2021」など国際的な受賞歴を持つ。現在は都内飲食企業のサービス・ビバレッジ責任者を務める傍ら、Apoptosisで日本茶飲料をはじめとするノンアルコール飲料の開発に取り組む。真空管アンプの温かみのある音が好き。



FOR FOOD & BEVERAGE PROFESSIONALS

料飲の体験を、ノンアルコールで拡げていく。

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