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「氷の溶けたウーロン茶」から、テーブルマリアージュは始まった——ワイングラスが生む、レストランの一体感

連載|テーブルの仲人の考えごと 第7回


横浜のホテルバーからキャリアを始め、インポーター営業、総合食品酒類卸売、量販店の現場管理、ラグジュアリーホテルのソムリエからビバレッジマネージャーまで、料飲の現場を多角的に歩んできた本郷孝人が、テーブルを囲むゲストとお料理、そしてドリンクの"あいだ"に立つ仲人の視点から、日々のサービスで考えていることを綴る連載。第7回のテーマは「テーブルマリアージュに欠かせないテーブルアイテム」。一杯のウーロン茶への違和感から始まった本郷さんの問題意識が、どのようにしてアルコールとノンアルコールを同等に扱う「ワイングラス」というシンプルな答えに辿り着いたのか。その原点を読み解きます。


文|シェ・フルール横濱 本郷 孝人

記事構成|Apoptosis 尾崎 眞子



テーブルマリアージュに欠かせない、最大のテーブルアイテム──それは「楽しもう」とするお客様自身



テーブルマリアージュを提供するために欠かせないテーブルアイテム。その大筆頭は、その日その食事を心の底から楽しもうと思うお客様です。それを大前提として、次に必要なテーブルアイテムは、グラスです。


「氷の溶けたウーロン茶」という原体験──飲み会で見た、誰のためでもない一杯


そのように考えるに至った根源には、昨今はほぼ行かなくなっている、もはや死語でもある「飲み会」での出来事がありました。


「飲み会」論については、先々機会があれば深掘りできたらと思いますが、おそらく「飲み会」に参加したくもない方の目の前に置かれた、飲みたくもない、氷の溶けた一杯のウーロン茶の残像が、心底食事を楽しみたい、楽しんでいただきたいと思うようになった一つの要因になっていると確信しています。



そもそも家系的にアルコールを摂取する環境で育ってきた自分にとって、社会人になってからの酒宴の場でのノンアルコールは、正直、受け入れ難いものでした。ましてやそれが、国産のものでないことにも、長年の違和感を感じていました。


そのような積年の想いから、今は払拭できている環境でサービスをできていることに、サービスマン冥利に尽きることと、心から嬉しく思っています。



アルコールもノンアルコールも、同じワイングラスで──"対等"がテーブルにもたらしたもの


氷の溶けた一杯のウーロン茶から、テーブルマリアージュを確立するために最初に憚ったのが、「このお酒にはこのグラスでなければならない」という、固定概念となっていたバーテンダーとしての経験でした。


そこで大切にしたのが、アルコールもノンアルコールも同等に捉えるという考え方でした。そこから導き出されたのが、アルコールの方もノンアルコールの方も、同じグラスを使用する──すなわちワイングラスを使用するということでした。




ワイングラスが生んだ、想像以上の効果──罪悪感の払拭、ワンモアバイ、テーブルの統一感


このことが、テーブルマリアージュを揺るぎないものにしていくことには、正直、想像以上の効果をもたらすことになるとは思っていませんでした。


  • 「ノンアルコールをワイングラスで飲めるなんて、素敵!」

  • 「ノンアルコールをワイングラスで飲むと、いつもより美味しく感じる」


これらは、サービスの現場でいただいたお客様のリアルな言葉です。

ワイングラスへの統一は、サービスのオペレーション上も効率化を生み出し、さらには、最もテーブルマリアージュにとって重要なテーブルの統一感を作り出すことになっていきました。


そしてこの統一感が、アルコールの方の罪悪感を払拭し、「ワンモアバイ」につながっていきます。


ノンアルコールの方にもしっかりとしたアイテムを選定し、アルコールと同等のメニューをご用意することで、かつてはウーロン茶一杯で終わっていたノンアルコールの方も「ワンモアバイ」へとつながり、売上にも大いに貢献してくれるということになっていきました。



「美味しいのは当たり前、楽しいお店が良いお店」──ご常連からいただいた言葉


諸々の状況が整ってくると、お客様から「美味しかったから楽しかった」というお言葉をいただけるようになってきました。

ある時、ご常連のお客様からは、こんな言葉を頂戴しました。 「美味しいのは当たり前、これからは、いかに楽しいお店であるかが大切!」



ここではき違えないようにしなければならないのが、華美過度なパフォーマンスでお客様を楽しませることではないと考えています。そこには、個のスキルではなく、やはりお店のコンセプトマッチングの最大化が大切であると感じています。


そして、美味しかったから楽しかった、楽しかったからまた来たい、さらには、その日来てくださったお客様が次の予約をしていただけるようになる──これが、私たち飲食店が目指すところなのかな、と思っています。



連載「テーブルの仲人の考えごと」を振り返って


これまで約1ヶ月あまり、いただいたテーマから、連載全7回の記事を書かせていただきました。お読みいただける皆様の感じ方も様々、賛否両論あるかと思いますが、皆様の今後に少なからず参考にしていただけたり、何かしらのきっかけや気づきになれば幸いです。


自分自身も、まだまだ道半ば。日々精進するとともに、またテーマをいただけることがあれば、記事を書かせていただけたらと思っております。今後ともよろしくお願いいたします。



執筆者プロフィール

本郷 孝人(ほんごう たかひと) シェ・フルール横濱

ビバレッジコーディネーター


1971年、神奈川県横浜市生まれ。高校卒業後、大学在学中より横浜のホテルのバーからバーテンダーとして料飲サービス業のキャリアをスタート。都内のホテルに勤務したのち、総合酒類小売業、輸入ワインおよび洋酒業、総合食品酒類卸業で、ヴーヴ・クリコ・ジャパン、MHD(モエ・ヘネシー・ディアジオ)などを経て、約25年間にわたり営業職として従事。2019年より飲食店サポート業務を手がけつつ、再びサービス業界へ。福岡のフレンチ「アニオン」、箱根リトリートホテル&ヴィラ by 温故知新、ウエスティンホテル横浜のメインダイニング「アイアンベイ」での勤務を経て、2025年8月よりシェ・フルール横濱の現職。バー、ホテル、インポーター、ディストリビューター、量販店、そしてサービスの現場―飲料をめぐるあらゆる立場を経験してきた視点から、「テーブルマリアージュ」というキーワードを軸に、料飲のあり方を探求し続けている。

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