“売れる一杯”はどのようにつくられるのか?ザ・カハラ・ホテル&リゾート 横浜に学ぶホテル料飲の顧客起点
- Mako Ozaki

- 1 日前
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ザ・カハラ・ホテル&リゾート 横浜/横浜ベイコート倶楽部で党淑潔さんが貫く“売り方”から逆算するノンアルコール

ノンアルコールの需要は、もはや「飲めない人のための代替品」という位置づけでは語れない。ホテルやレストランにとってそれは、顧客体験をどう設計するか、そしてその体験をどう収益につなげるかという、料飲戦略の中核に近づきつつある。実際、コロナ禍を境に、ノンアルコールを求める声は明確に増え、アルコールを飲む量そのものも減ってきたという。
横浜・みなとみらいに立つザ・カハラ・ホテル&リゾート 横浜と、会員制の横浜ベイコート倶楽部。その両方の料飲体験を横断的に見つめるのが、リゾートトラスト株式会社 ワイン&スピリッツ支配人で、エグゼクティブソムリエダイレクターである、党淑潔さんである。辻調理師専門学校卒業後、イタリア料理、パティシエ、タイユヴァン・ロブション(現・ジョエル・ロブション)、シンガポールのLes Amis Group、日本料理かんだ、そして現職へと続く経歴は異色だが、その根底に一貫して流れているのは「顧客をどう見るか」という視点である。
今回のインタビューで見えてきたのは、党さんにとってのノンアルコールが、単なる商品追加ではないということだ。仕入れ、見せ方、価格、グラス、ペアリング、スタッフ教育まで含めて一つの体験として設計する。その全体を束ねるキーワードが、「徹底した顧客目線」である。
顧客の前に立つまでの長い準備──ロブション時代に叩き込まれたサービスの基礎
党さんは、もともと料理人志望である。父親の影響や「料理の鉄人」への憧れから料理の道を志し、イタリア料理店での勤務を皮切りにキャリアを始めた。しかし、最初に与えられたのは厨房ではなくサービスの仕事だった。ワインセラーの掃除を任されるところから始まり、そこから飲料への興味が広がっていく。料理、菓子、サービスという複数の現場を経たことが、いまの立体的な料飲観につながっている。

その後に入ったタイユヴァン・ロブションで、党さんはサービスの根幹を叩き込まれた。単に料理を運ぶのではなく、顧客の前に立つ準備をどこまで積み上げられるか。そこで学んだ厳しさが、いまのスタンスを形づくっている。
「厳しく仕込まれたことが、今となっては非常に生きている。僕のサービスの根幹とするところはロブションのサービスなんです」
象徴的なのが、ジョエル・ロブション氏のお茶を淹れる役目を任されるまでのエピソードである。抽出の仕方、温度、タイミングといった細部にこだわり抜く姿勢は、ワインやノンアルコールの提案にもそのまま接続される。顧客に届く一杯の前には、長い準備が必要だという感覚が、党さんの原点にある。
売り方から逆算して仕入れる、商売としての視点
党さんのキャリアで非常にユニークな点は、シンガポールのベンチャー企業に創業メンバーとしてジョインし、C2Cマーケットプレイスでラグジュアリーアイテムを担当した経験である。自らInstagramやFacebookなどを運用し、トラフィックをいかに集めるか、というところから汗をかいて取り組んだ。
この経験が商売としての視点から仕入れることにつながったそうだ。党さんはホテルやレストランの料飲ではどうしても「品質の良いものを選ぶ」ことに意識が向きがちだが、その先の「どう売るか」を見据えて商品を仕入れることが重要だと語る。
「最終的にお客様に買っていただかなければいけません。これを仕入れたとしたら、こう販売して、こういうグラスなどの道具で売っていって、というのを戦略づけているんですが、これは他の方とは違うやり方かもしれません」
この発想は、アルコールでもノンアルコールでも、究極食材選びも同じだ。何を置くかだけではなく、どのグラス(お皿)で、どの順番で、どの文脈で見せるかまで考え抜く。その結果として、顧客単価も変わる。
党さんにとって仕入れは、良い商品を目利きして選び取るのではなく、どう売るかという販売戦略の起点であるといえる。
売れる瞬間に直接関わるのが、メニューや商品の写真だ。党さんはここもこだわり抜いている。
「僕、統一感のないメニューが大っ嫌いなんですよ。フォントや文字の大きさは必ず揃えるし、写真も毎月カメラマンさんに撮影してもらう。これがノンアルコールを飲む楽しさ、エチケットを見ながら選ぶ楽しさにつながってくると、コロナの時に学んだんですよね」
このエピソードに、党さんの思想が詰まっている。美味しい商品を仕入れても、見せ方が雑であれば売れない。逆に、ラベルのデザインや写真映えが、最初の一歩をつくることもある。

党さんのデザインしたメニューは、最初の乾杯におすすめのものとしてApoptosisのスパークリングティーを配置しており、スクロールしていくと、食中におすすめのもの、特別な日に選びたいもの、家族皆で楽しめるものなど、シーンに応じてじっくり選べる、選びたくなるような仕組みになっている。メニューを改善すると、顧客単価も他の施設と比べて上がったと言う。
ノンアルコールでは「色んな種類から好みのものを選ぶ」「1杯目、2杯目、3杯目とどう飲み分けるか」といった考え方がまだまだ浸透していない。だからこそ、味だけではなく、どうビジュアルとして映るかも重要になる。ドリンクがどう見えているか?まで含めて、顧客の選択は左右される。
国産ドリンクがホテルのコンセプトを体現し、この土地ならではの価値につながる
党さんが重視しているのは、単にホテルとして上質なサービスを提供することではない。ザ・カハラ・ホテル&リゾート 横浜で、料飲体験を通じてどのように地域の価値を届けるかである。そこで重なるのが、KISCAの考え方だ。
KISCAとは、The Kahala’s Initiative for Sustainability, Culture, and the Arts の頭文字を取っており、本国ハワイのザ・カハラで2017年に始まったハワイの美しい自然や文化を若い世代、そして未来に受けついでいくことを使命とした活動である。横浜でも、その精神をそのまま輸入するのではなく、「横浜流のKISCA」としてどう根付かせるかが模索されている。

その文脈で重要になるのが「ローカルリスペクト」である。党さんは、日本ワインをはじめとする国産ドリンクを積極的に取り入れ、日本の食材や日本ならではの味わいを、国内ゲストにもインバウンドゲストにも伝えようとしている。
実際、日本ワインのラインナップも大きく拡充してきた。こうした料飲設計は、土地や文化、人々の暮らしを尊重しながらホテルの価値を地域につないでいくというKISCAの思想とも響き合う。
「ザ・カハラ・ホテル&リゾートというとハワイのイメージを持たれる方が多いのですが、我々が日本でできるKISCAのスピリッツってなんだろうと考えると、ローカルリスペクトだと思うんです」
料理長の青木さんも神奈川出身で、神奈川の食材をよく活用して料理を提供している。さらに党さんは、ローカルリスペクトを通じて提供したい体験についてこう触れた。
「私達のホテルにいらっしゃる方の中には、経営者など孤独な戦いをされている方も多い。そのような方々が元気になる活力を、私達は常に提供しなければいならない。どのようなサービスをしたら響くのか?富裕層のお客様は様々な体験をされていますし、私達も特別なものを提供しなければなりません」
Apoptosisもまたその文脈の中で導入されたアイテムのひとつだ。
Apoptosis採用の決め手は、味だけではない──写真売りとノンカフェイン需要
Apoptosisの商品を導入した経緯にも、党さんらしい顧客目線が表れている。もともと販売価格3万円のシャインマスカットジュースをトライアルで提供したところ、想像以上に引き合いがあった。巨峰ジュースは比較的流通しているが、シャインマスカットジュースは手に取る機会が少なく、特別感を演出するのに最適だったのだ。
この経験でノンアルコールに手応えを得た後、次の一手となるアイテムを購買部のメンバーにも力を借りながら幅広く探していた。そこで目に留まったのが、 Apoptosisのラベルである。
「ラベルがすごい輝いていたんですよ。写真に撮ってメニューに載せるのを想像して、売れるなと思いました」
加えて、ルイボススパークリングティーの存在が大きかった。

党さんは以前からノンカフェインの商品を探していたという。北米からのゲスト、妊娠中のゲスト、夕食時にカフェインを避けたいゲスト、昔はお酒を飲んでいたが今は控えているゲストなど、ラグジュアリーホテルでは“飲まない理由”が多様である。そうした場面で、単なるソフトドリンクではなく、ゲストの事情にあわせておすすめできる一杯が重要になる。
「ノンカフェインのものをずっと探してたので、サンプルをたくさん取り寄せて、スタッフとも相談して、この2つに絞りました。ルイボススパークリングティーは絶対に使おうと思っていました。それから、緑茶のスパークリングは青竹のようなイメージに炭酸が入るので、より清涼感が加わる。甘くないものが欲しい、という方もおすすめしています」
実際の提供では、この2商品をワイングラスで出しているという。香りを立たせるためであり、同時に“乾杯にふさわしい一杯”としての格をつくるためでもある。メニュー上でも、最初の乾杯の提案として自然に伝わる工夫は、料飲現場にとって参考になるのではないだろうか。
ノンアルは“寄せにいける”──ペアリングの再現性と、体験を分断しない価値
党さんは、ノンアルコールドリンクの面白さを「ドリンクから料理に寄せに行けること」だと捉えている。ワインのようにヴィンテージ差や個体差に左右される面が比較的少なく、モクテルのようにブレンドすることで料理との相性を意図的に合わせやすい。
「ノンアルコールの方がペアリングのポテンシャルが高いのではないかと思います。ワインと同じように香り、フレーバー、テクスチャーで料理と組み合わせます」
例えば、緑茶のスパークリングは、緑茶の青さや清涼感、炭酸の抜けの良さが、素材の味を活かした料理や椀物、酸を使った料理とよく合う。一方のルイボススパークリングは、ハーブや果実を思わせる複層的な香りとノンカフェインという機能性を備え、乾杯や軽やかな前菜、フィンガーフードにも乗せやすい。どちらも「甘くないこと」が、ペアリングとしての汎用性を高めている。

さらに重要なのは、ノンアルコールがテーブルの体験を分断しないことだ。飲む人と飲まない人が同席することは、特別なことではない。
実際、党さんは、子どもを含む家族4人で来店し、家族全員でノンアルコールペアリングを楽しんだ例を挙げてくれた。お酒を飲めるかどうかに関わらず、全員が同じ流れで料理とドリンクを味わえることに、ノンアルコールの大きな価値があるという。接待でも家族利用でも、誰かだけが水やお茶で済ませる構図は、ラグジュアリーな外食体験としては満足いくものではない。ノンアルコールペアリングには、その断絶を埋める力がある。
「こうやって家族みんなで同じことを体験できるわけじゃないですか、ノンアルコールって」
外食は“ご褒美”になる──だからこそ、水で終わらせない
党さんは、これからの外食はますます“ご褒美需要”が強くなると見る。
物価高の時代、日常的に何度も行く場所ではなく、誕生日や記念日、家族での会食、あるいは久しぶりの会食のように、明確な目的を持って訪れる場所になっていく。そのとき顧客が求めるのは、アルコールかノンアルコールかではなく、その場にふさわしい特別感のある一杯である。
「これからの時代、外食は、会社員の方にとってご褒美になると思うんですよ」
選ぶ楽しさ、語れる価値、料理と響き合う余韻まで含めて提案する必要がある。
ノンアルコールは、もはやアルコールの代替ではない。料理に対してドリンク側から精度高く合わせにいけるペアリングの再現性や、飲む人も飲まない人も同じ流れで食卓を楽しめるという価値。それらが改めて評価され始めているのかもしれない。
【ザ・カハラ・ホテル&リゾート 横浜/横浜ベイコート倶楽部のポイント】
① 仕入れを“売り方”から逆算している
良い商品を選ぶだけではなく、どの器で、どの順番で、どの導線で提案するかまでを含めて設計している。ソムリエの選定眼とマーケティング視点が一体化している点が、党さんの最大の特徴である。
② ノンアルコールを“見せ方”まで含めて商品化している
ラベル、写真、メニューの統一感、タブレットでの見え方まで含めて売場をつくっている。ノンアルコールは味だけでなく、選ばれる入口が重要だという実践例である。
③ ノンアルコールを、飲む人と飲まない人をつなぐ存在として捉えている
飲む人と飲まない人が同じ食卓で同じ高揚感を共有できることに価値を見出している。乾杯、ペアリング、接待、家族利用など、ノンアルコールの役割をシーン別に明確に捉えている。
【ザ・カハラ・ ホテル&リゾート 横浜/横浜ベイコート倶楽部で導入中のApoptosis商品】

Sparkling Japanese Tea -Apoptosis Green-(茶草場緑茶スパークリングティー)

世界農業遺産である茶草場農法の茶葉を用いたスパークリングティー。野草や野花を思わせる爽やかな香り、やさしい旨みと茶葉の甘み、キレの良い喉越しのあとに残るほどよい渋みとコクが特徴である。素材の味を活かした料理、酸を効かせた皿、椀物や餡のある料理とも相性がよい。
Sparkling Japanese Tea -Rooibos-(ルイボススパークリングティー)

ルイボスをベースに、ハーブ、ブルーベリー、クランベリー、アロエ、ヨーグルトのような香りが折り重なる、甘くない大人向けのスパークリングティー。カフェインレスで提案しやすく、乾杯、立食、フィンガーフード、軽やかな前菜との相性が高い。ラグジュアリーな食事シーンで“飲まない理由”に寄り添える一杯である。
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Apoptosisは、ホテル・レストラン向けに多彩なノンアルコールドリンクを開発・キュレーション・提供しています。Contactからお気軽にお問い合わせください。
店舗情報:
〒220-0012神奈川県横浜市西区みなとみらい一丁目1番3号
〒220-0012神奈川県横浜市西区みなとみらい一丁目1番4号
取材協力:党 淑潔さん(ザ・カハラ・ホテル&リゾート 横浜 ワイン&スピリッツ支配人)取材日:2026年5月













