飲料市場のいま——アルコール・ノンアルコールワインをめぐる需要の変化と、飲食業界が知るべきファクト
- Ken Zhao(趙 権益)

- 1 日前
- 読了時間: 8分
ノンアルコールワインとは、アルコールを除去したワイン(脱アルコールワイン)、またはワインのように食事と合わせて楽しむことを目的としたノンアルコール飲料の総称です。近年、飲料選択の多様化を背景に、高級レストランやホテルのドリンクリストで注目が高まっています。

「ノンアルコールワイン」を検索するゲストが増えています。その背景には、飲料市場全体が「量の時代」から「選択の時代」へと移行しつつあるという構造変化があります。アルコール飲料が衰退しているわけでも、ノンアルコールが代替品として台頭しているわけでもありません。飲料の選択肢そのものが多様化し、ゲストが飲むもの・飲まないものを積極的に選ぶ時代になりました。この記事では市場データをもとに両市場の現状を整理し、飲食業界のプロフェッショナルが今押さえるべき視点をお伝えします。
飲料市場の全体像——数字で見る「変化の構造」
まず、現在の飲料市場をファクトベースで整理します。アルコール・ノンアルコール双方のデータを並べることで、「対立」ではなく「多様化」という実態が見えてきます。
カテゴリ | 主要データ(2024〜2025年) | 出典 |
酒類総市場(出荷金額) | 3兆3,630億円(2024年度)。2025年度は97.4%の3兆2,740億円見込み | 矢野経済研究所(2026年1月) |
日本産酒類 輸出金額 | 1,495億円(2025年)。過去最高額を更新。ビール・リキュールも品目別最高 | 農林水産省(2026年) |
ノンアルコール飲料市場(国内) | 867億円(2024年見込み・前年比104.2%)。2025年は930億円予測 | 富士経済(2025年) |
ノンアルコール飲料 ケース数 | 4,584万ケース(2024年、前年比11%増・10年前比1.6倍) | サントリー推計(2026年) |
ノンアルコールワインテイスト・RTD | 2022年市場206億円(前年比117%)、2023年221億円予測 | 富士経済・CCCMKホールディングス |
数字を見ると、双方の市場が「それぞれの軸で成長・変化している」ことがわかります。酒類市場は金額ベースでは直近まで拡大傾向にあり、輸出は過去最高を更新しています。一方でノンアルコール飲料市場も独立した成長軌道を持っています。これは対立ではなく、飲料市場全体の選択肢が広がり多様化しているということです。
アルコール飲料市場のいま——「量から質・多様性」へのシフト
アルコール飲料市場は、長期的に見ると「消費量(数量)は変化していますが、価値や体験の多様化が進んでいる」という文脈で理解するのが正確です。
プレミアム化・クラフト化という成長軸
ジャパニーズウイスキーは世界5大ウイスキーの一角を占め、国際品評会での受賞実績も豊富です。2025年の日本産酒類の輸出金額は1,495億円に達し、過去最高額を更新しました。ビール・リキュールについても品目別最高額となっています。国内でも蒸留所の数は100を超え、クラフトウイスキーの醸造所が各地で誕生しています。

プレミアムビール(クラフトビール・輸入ビール)も根強い需要を持ち、「量を飲むのではなく、良いものを選んで飲む」という消費行動が定着しています。これはワインの世界でも同様で、テロワールや生産者の背景を語れる一本を選ぶゲストは、高級業態では増加傾向にあります。

業務用・インバウンド需要の回復
2024年度のアルコール市場の金額ベース拡大には、コロナ禍で中断されていた宴会・祭事の完全再開とインバウンド(訪日外国人客)需要の増加が大きく寄与しています。業務用市場では「体験価値を重視する消費行動」が広がり、高単価商材が活発に動いています。
「業務用市場では体験価値を重視する消費行動への変化により、プレミアムビールやジャパニーズウイスキーなど高単価商材が活発に動いている」 ——矢野経済研究所(2026年1月)
飲酒スタイルの多様化という現象
消費量の変化は「飲酒離れ」よりも「飲み方の多様化」として捉えるのが実態に近いでしょう。「一杯目から自分の好きなものを選ぶ」「ゼブラ飲み(アルコールとノンアルコールを交互に楽しむスタイル)」など、かつての「とりあえずビール」一択から、選択の個別化が進んでいます。これはアルコールの否定ではなく、飲料選択全体が豊かになっていることを示しています。
飲み方の変化 | 以前 | 現在(2024〜2026年) |
1杯目の選択 | 「とりあえずビール」が多数 | 個人の嗜好で1杯目から選ぶスタイルが定着 |
飲み方のスタイル | アルコールのみの席が一般的 | 「ゼブラ飲み」など交互飲みが広がる |
価値基準 | 量・コスパ重視 | 品質・体験・背景(産地・製法)重視 |
外食での飲み物 | ドリンクは料理の添えもの | ドリンク自体の体験価値が問われるように |
ノンアルコール市場のいま——「仕方なく」から「積極的に選ぶ」へ
ノンアルコール飲料市場は独自の成長軌道を持っています。重要なのは、その成長がアルコール市場との対比としてではなく、飲料選択肢の拡張として起きているという点です。
市場規模と成長率
富士経済の調査によると、2024年のノンアルコール飲料市場は867億円(前年比104.2%)で、2025年は930億円へのさらなる成長が予測されています。サントリーの推計では2024年の市場ケース数は4,584万ケースで、前年比11%増、10年前と比べると1.6倍の規模です。
消費者意識の変化——「選ぶ理由」が変わった
サントリーが2025年に実施した消費者調査では、月1日以上ノンアルコール飲料を飲む人の増加理由のトップは「健康に気をつけたい」(24.8%)、「飲みやすい」(24.5%)でした。「車を運転したい」(15.8%)「本当は飲みたいが代替で」といった消極的な理由は相対的に低い割合にとどまっており、ノンアルコール飲料は「飲めないから仕方なく選ぶもの」から「飲みたいから選ぶもの」へと変化しています。
ノンアルコールワインテイスト飲料の広がり
ノンアルコール市場の中でも、ビールテイスト飲料に加えてワインテイスト・RTD(チューハイ・カクテルテイスト)系の需要が拡大しています。飲用シーンも「夕食時」を中心に、「休日の昼間」「友人知人との集まり」へと広がっており、食事と組み合わせて楽しまれるシーンが増えています。
「ノンアルコールワイン」というキーワードで検索するゲストが増えているのは、この流れの延長にあります。食事のテーブルで、ワインと同様の体験——産地の話、料理との相性、飲み進める中での味の変化——を求めているのです。
ノンアルコールワインをはじめとする食中飲料の選択肢について、貴店の業態に合わせてご相談いただけます。 導入相談はこちら
飲食業界への示唆——「選択肢の充実」という視点
以上のファクトが示すのは、飲食業界において「アルコールかノンアルコールか」という二択の発想自体が、ゲストの選び方の実態に合わなくなりつつあるということです。ゲストの一人ひとりが、その日の体調・気分・目的に応じて、自分に合った飲み物を選んでいます。

高級業態のレストランやホテルF&Bにとって、これは「ドリンクリストをどう豊かにするか」という問いです。アルコールのラインナップを磨くことと、ノンアルコールの選択肢を充実させることは、対立しません。どちらも「ゲストの選択を豊かにする」という同じ方向を向いています。
「語れる飲料」という共通の基準
アルコール飲料でもノンアルコール飲料でも、高級業態で支持されるものには共通点があります。それは「語れる背景を持つ」ということです。産地、製法、造り手のこだわり、料理との相性の理由——こうした背景を持つ飲料は、ソムリエが自信を持って説明でき、ゲストの体験を豊かにします。
ノンアルコールワインの市場が成長する中で、単に「アルコールを抜いたワイン」を置くのか、「食事に向き合える独自の複雑さを持つ飲料」を選ぶのか——この選択が、高級業態の差別化につながります。
実際の導入事例については、導入事例ページでご確認いただけます。
Apoptosisが取り組む理由——日本茶という素材と飲料選択の拡張
Apoptosisブランドとして提供するのは、ブドウから作るノンアルコールワインではありません。日本各地の産地農家から直接調達した茶葉を原料とした、食中飲料として設計されたボトリングティー、スパークリングティーです。
この事業を立ち上げた背景には、上述した市場の変化があります。飲料選択が多様化し、ゲストが「飲まない」ではなく「別の何かを選ぶ」ようになってきたとき、レストランのドリンクリストにはその受け皿が必要になります。ノンアルコールワインというカテゴリーが成長する一方で、高級業態のソムリエが「自信を持って提供できる」水準の製品はまだ限られています。
日本茶は、そもそも食中飲料として長い歴史を持つ素材です。緑茶の旨みとミネラル感、ほうじ茶の香ばしさ、烏龍茶の花香、和紅茶のタンニン感——これらはアルコールを除去する工程なしに、料理と向き合う複雑な味わいを持っています。さらに産地・農法・収穫時期という「テロワール」の概念を持ち込めることが、ソムリエが語れる一本を実現します。
アイテムラインナップ
Still Japanese Tea(ボトリングティー)
Sparkling Japanese Tea(スパークリングティー)

各ボトルの詳細・ペアリング例については、製品ページをご覧ください。
それぞれのドリンクは産地・茶種・製法の違いによって異なる味わいを持ちます。コース料理の進行に合わせて複数の茶をペアリングする設計も可能で、ノンアルコールであっても「飲む体験」としての充実したコースを提供できます。
ペアリング設計のご相談も承っています。 お問い合わせはこちら
サンプルをご請求ください
Apoptosisでは製品サンプルのご提供が可能です。詳しくはお問い合わせください。
著者プロフィール
Ken Zhao / Apoptosis株式会社 COO & Founder
物理インフラからテクノロジーまでをまたぐグローバルな事業経験を持ち、日本の一次産業・茶文化・ノンアルコール飲料市場の可能性を確信してApoptosisを創業。飲食業界における飲料選択の多様化と、産地農家との連携による高品質飲料の供給に取り組んでいます。
















